【上野樹里】亀は意外と早く泳ぐ【蒼井優】

全く普通の主婦の女性(上野樹里)が、日常的にこんな変なことたまにあるだろうっていうことばかりをたくさん経験しながら、街でスパイをしていく邦画。2005年。三木聡監督。 内容は全てがネタです。夜8時とか9時とかから売れている芸人がやっているコント番組の集積みたいな映画です。意味のない、くだらないギャグを、ウケないかもしれないけど、決して焦らないペースで、これでもかとブツけてきます。 でも他のコメディ作品とは一線を画していると感じた部分があって、ネタが等身大なんですよ。自分もこの間こんなことあったなみたいな、普通のノリなんです。そこに上野樹里と蒼井優が出ているので、自分の友達がこんなことを経験しているような気分に浸れて、もうファンにはよだれモノです。 DVD を見ながらひとりでバカウケでした。

【封切日に】自虐の詩【見に行きました】

父親が逮捕されるという悲しい過去を持つ幸江が、町の小さな中華料理屋で働きながら、どうしようもないヤクザ崩れのチンピラのイサオを支えていく姿を描いたギャグマンガの映画版。オレは癖で「最高、最高」と何でも「最高」扱いにしてしまい、会社の同僚の中国人にすらネタにされるぐらいよく「最高」を連発しているのだが、この映画についても、やっぱり最高だと言いたくなってしまった。原作のファンでも納得のできの素晴らしい映画だ。

監督は、『金田一少年の事件簿』、『池袋ウエストゲートパーク』、『ケイゾク』、『トリック』などテレビの第一線で活躍する堤幸彦。原作のマンガは4コマ独特のオチの作り方が活かされているので、ちゃんと映像化できるんだろうかって不安だったけど、堤監督はそれをやってのけた。ゆるい絵のマンガと、色味や質感がダイレクトに伝わる実写ではテイストは異なるが、スタイリッシュな映像が嫌みなく作り出されていた。さすが商業映画の第一人者、原作のファンの期待にも答える実力を十分に持っている。

すごいのは監督だけでなく役者もだ。中谷美紀は10年以上前から大好きなのだが、最近の『電車男』、『嫌われ松子の一生』はふつうの良さだった。悪くはないがふつう。でも今回は衝撃的な良さだ笑。30代の疲れた主婦みたいな役だが、そのリアルな雰囲気が本当にきれいでびっくりさせらせた。また、相手役の阿部寛は、そのセリフはほとんどないが、ひとつひとつがまさに殺し文句であり、役者の実力が遺憾なく発揮されていた。 本作は実力っていう言葉を心底思い知らされた。中谷美紀×阿部寛×堤幸彦の相乗効果は計り知れない。だからこの映画のおもしろさは単に原作のよさには収まらない。プロデューサもこんなシビアな原作の企画を本当によくやりぬいたよなあって感動してしまう。原作のように号泣とまではいかなかったが、こんなに長時間涙が止まらなかった映画をオレは他に知らない。

【ロドリゲス】プラネットテラー イン グラインドハウス【ゾンビ満載】

コメディアンを目指すお色気ダンサーとその元恋人が謎の病に冒された人々とバトルするゾンビ系スプラッター映画。

オレが20代に見た最高の映画は『シンシティ』であり、本作はその監督ロバート・ロドリゲスの最新作である。チープなストーリー、下品な演出、リッターの出血量、B級ギャグなど、全てにおいてロドリゲスの実力が遺憾なく発揮されており、完全に期待通りの映画だ。

アメリカでは『グラインドハウス』という低俗映画として、タランティーノの『デスプルーフ』と2本立て同時公開されたが、商業的にコケたらしく、日本では2つがバラで上映。アメリカでコケた理由がまったくわからないぐらい相当面白かった。

毎度のことだがタランティーノとロドリゲスは似ているようで違う。ロドリゲスのテイストもすごいのだがやや古臭くもあり期待通りすぎて先が読める展開だったが、逆にタランティーノの低俗映画へのオマージュは彼の中で完全オリジナル作品に昇華していた。そしてあの独特の選曲により完成されていく世界観が不気味に心地よい。

【タランティーノ】デスプルーフ イン グラインドハウス【復活】

アメリカのバッドガールズが変質者とバトルする低級・低俗・低予算のB級映画。見る人を選ぶので誰にも勧めないけど、過剰なフェティッシュと暴力を自由に表現する本作は奇才クエンティン・タランティーノ復活の狼煙。Yahoo映画のユーザレビューではガールズの無駄な会話多すぎというコメント多数だが、この押し付けテイストこそ「帰ってきたタランティーノ」に違いない。スタイリング、ミュージック、カメラワークのインパクトは、さすがタランティーノというこだわりに思わずニンマリ。 見終わった後の自分が強くなったような気がして非常に爽快な気分に。キル・ビルもそうだったけどタランティーノの映画は公開初日に見に行くと映画が終わってから毎回必ず拍手が起こる。こんな満足感が得られる監督は他にいないですね。

【マイケル・ムーア】シッコ【最高傑作】

先進国で唯一、健康保険が企業任せのアメリカで、病気だが保険が降りずにまったく治療が受けられない市民たちの絶望を描いたドキュメンタリームービー。マイケル・ムーア監督作品。

なんで健康保険に入ってるのにお金が出ないの?

保険が効かない場合、医療費の個人負担っていくら?

今のアメリカの医療制度はいつ頃から始まったの?

アメリカ以外の国の医療制度ってどうなってるの?

映画を見れば上の疑問はすべて解決します。

マイケル・ムーアの主張とその表現手法は彼の全作品で一貫している。経済価値偏重のアメリカ政府と企業に対する批判、カナダ・イギリス・フランスとさらになんとあの国まで取材した国際比較、そして田舎やスラムなど下層に生きる市民たちの現実と、彼らとともに行う半分冗談のような直談判。。。医療が受けられな世界では普通の医療が受けられるということがこんなにも感動的だとは。後半俺は涙をこらえきれなかった。国保がいかに素晴らしいか、その事実を徹底的に見せつけられる映画だ。

25時

麻薬の密売がバレたせいで25時間後までに刑務所へ入らなければならない男が、家族、親友、恋人、仕事仲間たちと最後の夜を過ごすアメリカの悲劇映画。

やりきれない思いのエドワード・ノートンはトイレの鏡の前で、街にいる連中全員に向かって、「おまえらみんなクズだ!」と叫ぶ。だが結局それはオレ自身に対するネガティヴィティの裏返しでしかない。。悪いのはオレだ。麻薬で儲けて、ああそう、そんなことはわかっている。。これからいく刑務所が地獄であるということも。

この映画には派手なドンパチもカーチェイスもない。あるのはただ圧倒的なリアリティを前にして為す術のない自分だけだ。猜疑、欺瞞、嘲笑、そして絶望。。どこまでいっても否定の塊だ。だがその抑えた演出が、逆に心根にグサグサと突き刺さる。

思いやりの言葉をかけてくれる親友。この日を最後に、もうオレに会うことも無いだろうけど。

やさしい恋人。でもこのオンナ、ただの金目当てだったかもしれない。垂れ込みに対する疑いがオレの頭から離れない。。

ぁぁもう時間なのか。親父の車で、刑務所へ。。親父、これから先の人生って。。。。

友情、愛、仕事など、全てにおける信頼の意味を改めて思う。同時に、人生を生きるということも。「仕方がなかったんだ!」という仕事仲間の言い訳が、いやに心に引っかかる。

演技、映像、音楽、演出など、あらゆる面が上質。9.11後のNYを舞台に、社会派映画監督スパイク・リーが「アメリカ」を描いた傑作。

結婚できない男

8月の中旬のお盆に実家へ帰ったら、母親が「あんたにそっくりなキャラが出ている話があるのよ!」なんて興奮していうのだが、俺は「ふーん」と関心なさげに答えていたら、勝手にビデオのスイッチを入れて見せ始めたドラマがあった。

『結婚できない男』

これ、面白い。

 

主人公の阿部寛が40代の独身男を演じているのだが、キャラの設定にリアリティがあってとにかく面白い。外見・収入・社会的地位がそろった彼は、一般的に女性にはモテそうだが、こだわりのある建築家で完璧主義なので性格がどこかおかしい。ああこんな人いるよねっていうところをたくさん持っていて、阿部寛がそれをコミカルに演じている。


・結婚はしないと公言し、女性に関心を示さない。人間関係を根本的に嫌がっている。

・うんちく好きでどんなことでも説明したがる。花火の仕組みは…、金魚掬いの極意は…、お好焼きの作り方は…っていちいちしゃべりすぎですよ!

・部屋で趣味のクラシックを大音響で聞いて興奮して指揮のまねを始める。

・しっかりとした食事を自ら作り、健康に気を使って青汁、牛乳などを飲んでいる。

・そうめんを茹で始めてから生姜がないと気が付いてわざわざ買いに行く。

・部屋の隅から隅から徹底的に掃除する。塵一つ落ちていない。

・プラモデルの部品を1つ無くしてしまったら、もう1セット買う。

・コンビニのポイントカードは持たず、薦められても毎回断る。

・スポーツクラブに通って肉体美を追求している。健康のためではないと言い張る。「自己実現というのは 自分のなかだけで完結することもあるんです」

・レンタルビデオ屋でB級の映画を借りて見ている。

・胃が痛い、お腹を壊したなど、すぐに病気なり、そして病院へ行く。

・知り合いと出会っても声をかけない。「何で声をかけないんですか?」と聞かれて、答えた理由が「話し掛けて話題がなかったら嫌でしょ」。

・普段は嫌味くさく皮肉ばかり言うが、根は優しい。


コメディなのでストーリーは1回完結で適当に見れる。最初は母親と一緒に録画を見ていたが、最後は「あれ、また見てるの?」なんてつっこまれるぐらいひとりで見ていた。

確かに似ている。。オレが偏屈にひとりで生きている姿に。。

「常識通り生きるなんて誰でもできますよ。

たとえ常識から外れても自分を貫き通すことに価値があると思いますね」

ひどい独り善がりだが、自分も同じセリフをどこかで言った気がする。。

阿部寛がひとりでステーキを焼いてワインを開けて満足げな表情で食事を始めるというどうでもいいディテールなんかが最高に笑えるのだ。

ああこれって俺だ。。

ほぼ全話録画して保存してあったので、結局全部見てしまった。

つーか俺に似てるって指摘する母親はヒドイ。。。