【炎の中で】 THE BATTLE OF MAKUHARI 【眠れ】

死んだはずのカリスマが生き返った。この週末はオレにとってそんな奇跡が舞い降りた。なぜなら世界で一番好きなバンドの再結成ライブがあったからである。

ヘビメタの最盛期を象徴するバンドであったガンズが勢いを失いはじめたころ、90年代初頭のアメリカンロックはニルヴァーナによるグランジムーブメントと、グリーンデイやオフスプリングに代表されるメロコアによって牽引されていた。そんな中で、政治的なプロテストを全面に押し出すヒップホッパーが、いままで誰も聞いたことがないような変態的なサウンドを操るギタリストとともに結成したバンドがあった。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン。グランジのアンダーグランドテイストやメロコアのポップパンク的なノリに対して、かつてのハードロックが持っていたへヴィネスをベースにして、ヒップホップ的なリズムの要素を取り入れた新しいロックとしてのミクスチャーロックは、このバンドとともに90年代後半のアメリカの最重要ロックムーブメントとなっていく。格闘団体PRIDEのテレビ放送のオープニングテーマに使われたことから日本での人気にも火がつき、当時その代表曲「Guerilla Radio」はテレビラジオ問わずヘビーにプレイされたが、2000年の年末に突如ボーカルのザック脱退を発表。事実上の解散となってしまう。 しかし解散発表直後にリリースされたカバーアルバム『Renegades』は、それまでのアルバム以上の強烈なインパクトを多くのファンの心に残してしまう。彼らの刺激を忘れることができないファンたちはこのバンドのCDをいつまでも聞き続け、再結成を待ち望んでいたのだった。

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うだうだ能書きを書いたが、俺にとってこのバンドはニルヴァーナと同じぐらいの強烈な人生の1ページなんだ。その再結成ライブなんだから、誰になんと言われようとこれだけは譲れない。とにかく全ての予定をOFFにして、戦地に赴かなければ。

久しぶりの世界ツアーで日本公演は大阪と東京の2箇所。東京の会場である幕張メッセに集まった客は推定2万人以上だ。オレは遅れて到着したので既にグッズ売場もクロークもトイレも長蛇の列。缶ビールは売り切れだし、なんなんだこの人ゴミは。みんな無愛想な男ばかりで結構不機嫌な雰囲気だ。

会場入りするとオールスタンディングなのに区画が厳しい。なんと柵があって後ろ半分のエリアから出れず、先頭まで行けない。オレの位置からステージまで100mぐらいあるし、ぜんぜん隙間がなくて区画内ですら移動できない。。これで盛り上がれるのか?

しかし、公演開始ともにそんな不安は一気に払拭される。案の定、公演がスタートしても移動できず豆みたいなザックとトムをちら見するのが精一杯だったが、彼らの実力は決して衰えていなかった。張り裂けるボーカル、変態的なギターはCDとは比べものにならないブッチギリの感動を呼び起こす。うわっホンモノだ!っていうあれね。カラオケで歌うと英語ラップが難しすぎる&音域が高すぎるという最高レベルの難易度なんだけど、ホンモノはCDよりうまいという恐ろしさ。オフスプリングもサンボマスターも曲が激しすぎて途中からボーカルが絶対疲れた雰囲気になってくるんだけど、ザックは絶叫しているのにはむしろ調子が上がっていくからこちらも負けていられない。

ステージから100mも離れているのにも関わらず、開始から1秒でこの前行ったサンボマスターのライブの先頭より激しく押し合う異常な盛り上がりになった。そのノリがいつまで続くかって思いきや、ファンのエネルギーは何曲やっても全く衰えない。みんな年齢層は25歳以上な感じなのによく体力続くなあって感心しながら、オレも人一倍飛び跳ねて声を張り上げた。一応世間的には極左のバンドなのでアメリカでは911以降に全曲が放送自粛リスト入りにされたらしいが、うちら日本のファンはなにも知らないただのバカの集まりだ。俺たちはここは思い切り騒がせてもらうという結束を暗黙のうちに誓い合っていた。正直逃げ場が全然ないぐらい暴動化していたので、オレももうやけくそに全曲暴れ続けた。

結局終わってみたら全身が汗でスブ濡れになってしまった。Tシャツどころかカーディガンとデニムまで絞れるぐらいの汗だ。ジャンプしまくりで足も2回くじく始末。おまけに気がついたら右肩の鎖骨が腫れてしまっていた。無事に終わってよかったとリアルに安心した。着替えを忘れたオレは全身濡れきったまま雪の東京を歩けないと思い、公演後に1時間も並んでツアーTを買って帰った。

そんなバトルオブマクハリは僅か一時間半だったがみんな完璧に満足する内容だったと思う。ザックもトムもソロが忙しいみたいだけど、やっぱこのバンドで新作作らないかな。

【上野樹里】亀は意外と早く泳ぐ【蒼井優】

全く普通の主婦の女性(上野樹里)が、日常的にこんな変なことたまにあるだろうっていうことばかりをたくさん経験しながら、街でスパイをしていく邦画。2005年。三木聡監督。 内容は全てがネタです。夜8時とか9時とかから売れている芸人がやっているコント番組の集積みたいな映画です。意味のない、くだらないギャグを、ウケないかもしれないけど、決して焦らないペースで、これでもかとブツけてきます。 でも他のコメディ作品とは一線を画していると感じた部分があって、ネタが等身大なんですよ。自分もこの間こんなことあったなみたいな、普通のノリなんです。そこに上野樹里と蒼井優が出ているので、自分の友達がこんなことを経験しているような気分に浸れて、もうファンにはよだれモノです。 DVD を見ながらひとりでバカウケでした。

【封切日に】自虐の詩【見に行きました】

父親が逮捕されるという悲しい過去を持つ幸江が、町の小さな中華料理屋で働きながら、どうしようもないヤクザ崩れのチンピラのイサオを支えていく姿を描いたギャグマンガの映画版。オレは癖で「最高、最高」と何でも「最高」扱いにしてしまい、会社の同僚の中国人にすらネタにされるぐらいよく「最高」を連発しているのだが、この映画についても、やっぱり最高だと言いたくなってしまった。原作のファンでも納得のできの素晴らしい映画だ。

監督は、『金田一少年の事件簿』、『池袋ウエストゲートパーク』、『ケイゾク』、『トリック』などテレビの第一線で活躍する堤幸彦。原作のマンガは4コマ独特のオチの作り方が活かされているので、ちゃんと映像化できるんだろうかって不安だったけど、堤監督はそれをやってのけた。ゆるい絵のマンガと、色味や質感がダイレクトに伝わる実写ではテイストは異なるが、スタイリッシュな映像が嫌みなく作り出されていた。さすが商業映画の第一人者、原作のファンの期待にも答える実力を十分に持っている。

すごいのは監督だけでなく役者もだ。中谷美紀は10年以上前から大好きなのだが、最近の『電車男』、『嫌われ松子の一生』はふつうの良さだった。悪くはないがふつう。でも今回は衝撃的な良さだ笑。30代の疲れた主婦みたいな役だが、そのリアルな雰囲気が本当にきれいでびっくりさせらせた。また、相手役の阿部寛は、そのセリフはほとんどないが、ひとつひとつがまさに殺し文句であり、役者の実力が遺憾なく発揮されていた。 本作は実力っていう言葉を心底思い知らされた。中谷美紀×阿部寛×堤幸彦の相乗効果は計り知れない。だからこの映画のおもしろさは単に原作のよさには収まらない。プロデューサもこんなシビアな原作の企画を本当によくやりぬいたよなあって感動してしまう。原作のように号泣とまではいかなかったが、こんなに長時間涙が止まらなかった映画をオレは他に知らない。

【ロドリゲス】プラネットテラー イン グラインドハウス【ゾンビ満載】

コメディアンを目指すお色気ダンサーとその元恋人が謎の病に冒された人々とバトルするゾンビ系スプラッター映画。

オレが20代に見た最高の映画は『シンシティ』であり、本作はその監督ロバート・ロドリゲスの最新作である。チープなストーリー、下品な演出、リッターの出血量、B級ギャグなど、全てにおいてロドリゲスの実力が遺憾なく発揮されており、完全に期待通りの映画だ。

アメリカでは『グラインドハウス』という低俗映画として、タランティーノの『デスプルーフ』と2本立て同時公開されたが、商業的にコケたらしく、日本では2つがバラで上映。アメリカでコケた理由がまったくわからないぐらい相当面白かった。

毎度のことだがタランティーノとロドリゲスは似ているようで違う。ロドリゲスのテイストもすごいのだがやや古臭くもあり期待通りすぎて先が読める展開だったが、逆にタランティーノの低俗映画へのオマージュは彼の中で完全オリジナル作品に昇華していた。そしてあの独特の選曲により完成されていく世界観が不気味に心地よい。

【タランティーノ】デスプルーフ イン グラインドハウス【復活】

アメリカのバッドガールズが変質者とバトルする低級・低俗・低予算のB級映画。見る人を選ぶので誰にも勧めないけど、過剰なフェティッシュと暴力を自由に表現する本作は奇才クエンティン・タランティーノ復活の狼煙。Yahoo映画のユーザレビューではガールズの無駄な会話多すぎというコメント多数だが、この押し付けテイストこそ「帰ってきたタランティーノ」に違いない。スタイリング、ミュージック、カメラワークのインパクトは、さすがタランティーノというこだわりに思わずニンマリ。 見終わった後の自分が強くなったような気がして非常に爽快な気分に。キル・ビルもそうだったけどタランティーノの映画は公開初日に見に行くと映画が終わってから毎回必ず拍手が起こる。こんな満足感が得られる監督は他にいないですね。

【マイケル・ムーア】シッコ【最高傑作】

先進国で唯一、健康保険が企業任せのアメリカで、病気だが保険が降りずにまったく治療が受けられない市民たちの絶望を描いたドキュメンタリームービー。マイケル・ムーア監督作品。

なんで健康保険に入ってるのにお金が出ないの?

保険が効かない場合、医療費の個人負担っていくら?

今のアメリカの医療制度はいつ頃から始まったの?

アメリカ以外の国の医療制度ってどうなってるの?

映画を見れば上の疑問はすべて解決します。

マイケル・ムーアの主張とその表現手法は彼の全作品で一貫している。経済価値偏重のアメリカ政府と企業に対する批判、カナダ・イギリス・フランスとさらになんとあの国まで取材した国際比較、そして田舎やスラムなど下層に生きる市民たちの現実と、彼らとともに行う半分冗談のような直談判。。。医療が受けられな世界では普通の医療が受けられるということがこんなにも感動的だとは。後半俺は涙をこらえきれなかった。国保がいかに素晴らしいか、その事実を徹底的に見せつけられる映画だ。

25時

麻薬の密売がバレたせいで25時間後までに刑務所へ入らなければならない男が、家族、親友、恋人、仕事仲間たちと最後の夜を過ごすアメリカの悲劇映画。

やりきれない思いのエドワード・ノートンはトイレの鏡の前で、街にいる連中全員に向かって、「おまえらみんなクズだ!」と叫ぶ。だが結局それはオレ自身に対するネガティヴィティの裏返しでしかない。。悪いのはオレだ。麻薬で儲けて、ああそう、そんなことはわかっている。。これからいく刑務所が地獄であるということも。

この映画には派手なドンパチもカーチェイスもない。あるのはただ圧倒的なリアリティを前にして為す術のない自分だけだ。猜疑、欺瞞、嘲笑、そして絶望。。どこまでいっても否定の塊だ。だがその抑えた演出が、逆に心根にグサグサと突き刺さる。

思いやりの言葉をかけてくれる親友。この日を最後に、もうオレに会うことも無いだろうけど。

やさしい恋人。でもこのオンナ、ただの金目当てだったかもしれない。垂れ込みに対する疑いがオレの頭から離れない。。

ぁぁもう時間なのか。親父の車で、刑務所へ。。親父、これから先の人生って。。。。

友情、愛、仕事など、全てにおける信頼の意味を改めて思う。同時に、人生を生きるということも。「仕方がなかったんだ!」という仕事仲間の言い訳が、いやに心に引っかかる。

演技、映像、音楽、演出など、あらゆる面が上質。9.11後のNYを舞台に、社会派映画監督スパイク・リーが「アメリカ」を描いた傑作。