華氏911

休日後の出勤は、朝から全てが重かった。ここ1ヶ月は嫌なことが続き、オレはずっと憂鬱だった。だがその悲しみにはもはや慣れた。なにせオレは華氏911を見たからだ。この映画は同じ監督のボウリング~に比べてさらに重々しく、終わりのない悲しみに包まれている。

先月からいろいろプライベートで悩んで1ヶ月以上ずっと味わっていた憂鬱さは、いままでのオレの人生の何よりもつらく、これよりつらくなることはあるのかと思って、最悪なケースを勝手に想像した。例えば友達がオレを恨んで自殺してしまうとか、オレの家族同士が殺しあうとか、震災がやってくるとか、ジョークみたいな悲劇をマジで真剣に想像し、訳のわからない結末を思い描いた。こんな今のオレは悲しみについて非常に敏感だ。

そんなタイミングでマイケルムーアがオレに見せてきた現実は、想像していた戦争の恐怖以上に、構造的に救いようのない不幸に縛られた人たちだった。イラクやフリントは、同じ地球上とは思えないほど、生きることに選択の余地はない人々の社会だ。オレはあの現実にはどうする術もなく、決して打ち勝つことはできない。自分のちっぽけな悩みなんて、時間が来ればいずれ癒えるだろうし、そしてオレにはまたチャンスが訪れる。この映画が描いている果てしない苦しみに対して今のオレができることは、ただ精一杯生きることだけだ。だから今の自分が生きていることを素直に喜びたいと思う。