読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

転々

自堕落な生活を送る借金漬けの男とその借金取りが、2人で数日間、都内の思い出の地をめぐり歩く、東京ローカルのロードムービー。

いい映画だった。映画を観てると東京の知ってる土地がかなり出てくるのでとてもウキウキになる。

設定は逆説に溢れている。借金づけ×借金取りという真逆の立場を組み合わせたり、一見悪そうな風貌の借金取りが実際はとても人間的で良い人だったり。そして借金取りはその愛の強さゆえに事件を起こしていて、その清算のために旅をする。

旅の後半、両親に捨てられたオダギリと夫婦関係が破綻した三浦は、知り合いの女がノリでついた嘘によって偽の家族関係を演じるはめになる。これが決定的にうまい。この家族の生活は、これから自首する予定の借金取りの三浦にとってはシャバでの最後の思い出であって、借金漬けで孤独な男オダギリにとっては逆に初めて経験する一家団欒のときだった。ここで2人の男は、偽りの家族を通じて、本質的な家族を回復していく。

オダギリは最後の食事で泣きながら言う「カレーが辛くて泣いているだけです」。このわかりやすいツンデレな演出が見れただけでこの映画を見た甲斐があったと思った。

どうでもいい小話を絡めながらゆるゆるにストーリーが展開する演出スタイルは監督三木聡のお家芸。この監督の映画を見る度に、毎回自分がこの映画に出てるんじゃないかっていう錯覚に陥る。

劇中何人も女性が登場するが、全員が全員、満遍なく頭がおかしい。こういう人たちに囲まれて生活できたら文句なしに幸せなんだ。俺はそう思う。