オーバー・フェンス鑑賞

家族も仕事もうまく行かなくなった男が職業訓練校に通う中、変な女と出会う青春リバイバル。 山下敦弘監督。

重いテーマながら笑いの要素をいれてほっこり描いた良作です。 こういう日本映画をもっと撮って欲しい。 オススメ。


以下ネタバレ。

オダギリジョー、蒼井優、松田翔太の持ち味を活かした配役が素晴らしい。オダギリは状況的にボロボロなはずなのに頑張らず自然体。寡黙ながら優しい物腰で周囲の信頼を得ていきます。蒼井優は完全なメンヘラ。松田翔太はスカした雰囲気でグイグイ引っ張るタイプで水商売経営をチラつかせたりこういう器用なやついるよな感が出ている。逆に言えば新しさはないですが彼らのお家芸をこなします。

蒼井優のメンヘラは気味が悪いほど完璧だった。ああいう人は実際いる。けっこういる。絶叫して怒り狂うシーンが2,3回あって、映画観ていて拒否反応を出す人がけっこういるんじゃないかっていうぐらいのリアリティ。

一番良かったところは夜の動物園のシーンです。蒼井優の鳥のダンスとなぜか降り注ぐ羽。羽が降り注いで他の鳥たちがざわついて、結局何がおこったのかわからなかったけど、2人の気持ちは縮まっていった。その何かが起きたっていう映像の魔法。青春が蘇ったかのような奇跡的な輝きを放ちます。

タイトルの暗喩がうまい。野球場のフェンス、動物園の檻、心の壁など如何様にもとれます。鳥がいっぱい出て来るのもいいです。蒼井優が求愛のダンスを真似たり、ワシは動物園から逃がそうとしても逃げなかったり、何か気持ちの動きがある瞬間には鳥が意味を添えているような表現をしています。

オダギリが元嫁と再開して最後に泣くシーン、あれは非常に共感しました。以前とても大切にしていた関係がもうどうしようもなくなってしまったを理解したときの悲しみ。ずっと指輪をとれなかった彼の気持ち。本当に痛いほど実感できた。

カメラは、カットを入れない中距離固定で複数人を同時に撮るシーンが多い印象。あんまりアップ画を使ってないので緊迫感みたいなのはない。ゆったりした日常画になっていました。