この世界の片隅に鑑賞

切れ目なく繋がれた台詞と最小限のカットで表現された隙のない編集が神業級。喜劇と悲劇が同居する本当の日常。未読だが原作も完璧なのだろう。のんちゃんの声は主人公そのままとしか思えず奇跡的な輝きすら感じた。コトリンゴの音楽と合わせて、究極のバランスで紡がれた傑作と言える。   開始してすぐのんちゃんの声が聞こえてもう傑作を確信したよね。こんな人間性が浮き出る声があるかよって。うまいとかいう次元じゃない自然さ。劇中モノローグが重要な本作はこの配役がなかったらこんな気持ちが入り込む作品に仕上がらなかったと誰もが感じているんじゃないか。   戦中の話なのに全くノスタルジックな余韻を残さない潔いカット割りと、日常の会話ながらも途切れることなく放たれるセリフの量が軽快なテンポを醸し出しているんだけど、それが戦争とのギャップを際立ている。戦争の災禍にコメディを挟み込むというバランスの妙技。これぞ編集でしょ。   原作に忠実なのか予算なのか理由はどうあれ、ほとんどのシーンがマンガのコマのようにあまり動きをつけずシンプルな作りになっていて、のんちゃんの声やテンポの早い展開に気持ちを向けやすい。逆にアニメーションとしてのダイナミズムは空爆や時限爆弾などここぞという瞬間にだけしっかりと描かれる。この絶妙なメリハリが非常に印象的な演出となっている。